WHAT IS BOSSA NOVA?


1950年代末、ブラジルでボサノヴァが爆誕する。フランスのヌーヴェルヴァーグやアメリカのハード・バップと同時代に誕生したボサノヴァは、サンバを現代風にアレンジしたもので、ブラジルのポピュラー音楽を一変させたのみならず、世界中に多大な影響を与えている。

ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライス、アントニオ・カルロス・ジョビンら先人たち、ベコ・ダス・ガハーファス(酒瓶の袋小路という意味)と呼ばれるコパカバーナの路地裏には、四重奏を聴かせる小さなクラブが存在し、あらゆる世代のミュージシャン:ルイス・エサとタンバ・トリオ、セルジオ・メンデス、エリス・へジーナ、バーデン・パウエルなどがそこから輩出されている。

1960年代半ばには、ボサノヴァの影響を強く受けた音楽ムーブメントがブラジルで勃興する。シコ・ブアルキ、エドゥ・ロボなどによる MPB 「エミペーベー(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)」、ジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾなどによるトロピカリーア(もしくはトロピカリズモ)、ミルトン・ナシメントが象徴するミナス音楽(ミナス・ジェライス州)などである。

ボサノヴァ自体のブームは比較的短命だったにもかかわらず、その影響はブラジル音楽の枠を超え、今日あらゆるところで感じることが出来る。ボサノヴァは、フランスの印象派、スペインの27年世代と同じような黄金時代を迎え、世界中、特にアメリカの作曲家や演奏家を魅了している。フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、コールマン・ホーキンスなどは皆ボサノヴァの妖艶な魔法の虜と言っていい。