『チコとリタ』(09)から13年。キューバ革命前後のニューヨークを舞台にシンガーとピアニストの悲恋を描いた同作で第84回アカデミー賞®長編アニメーション部門にノミネートされたフェルナンド・トルエバとハビエル・マリスカル。
稀代のジャズ通でグラミー賞受賞歴もある映像の魔術師と現代スペインアートを代表する巨匠が映画の舞台をリオデジャネイロに移し、再びタッグを組んだ『They Shot the Piano Player(原題)』が2023年のトロント国際映画祭でお披露目された。
トルエバ監督が敬愛するフランソワ・トリュフォー監督の『ピアニストを撃て!』(60)からタイトルのインスパイアを受けた本作は、「生身のアーティストとしてのテノーリオ・ジュニオルを描くにはアニメーションこそが最適だった」とトルエバ監督が語る通り、1964年に唯一のリーダーアルバム『Embalo(原題)』を残して失踪した天才ピアニストを巡る、スリリングで重厚な、ラテンアメリカ光と影の旅に観るものを誘っていく。
トルエバ監督の盟友であり、ハリウッドの名優ジェフ・ゴールドブラムを語り部のジャーナリスト役に、ヴィニシウス・ヂ・モライス、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルトら、テノーリオと同時代を生きたブラジル音楽の伝説がビッグスクリーンに蘇る。
ジャーナリストの旅を通して次第に明らかにされるラテンアメリカの不都合な真実。奇しくも2025年は日本とブラジルの修好130周年の節目の年を迎えるが、世界で最もボサノヴァ愛好家が多いと言われる、この国で、邦題『ボサノヴァ~撃たれたピアニスト』として、待望の劇場公開となる。